久が原タワープロジェクト (英語版はこちら

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フラックス&パラメータの長期観測結果

             乱流輸送の相似性(スカラー輸送とウェーブレット解析)



期間 2000年〜現在進行中

目的 住宅街上空のコンスタントフラックス層を捉える

 

意外に思われるかも知れませんが、森林・海面に比べると、都市の大気環境というのはまだまだわかっていないことが多いのです。その原因の一つに観測の難しさがあげられます。CO2・熱・水蒸気の放出量はフラックスと呼ばれ、環境問題では最も重要な情報の一つです。地球温暖化で「森林によるCO2吸収はこれくらい」、と言うのがありますが、精度の高い情報は鉄塔による緻密な観測に基づいています。これらの観測は広大で一様な森林に鉄塔を建てて、コンスタントフラックス層という薄い薄層(上空30m〜40mくらい)で計測を行わなくてはなりません。

都市なら、NTTタワー、電気会社タワー、TVタワー、いろいろあるじゃないかと思われるかも知れません。しかし、そう簡単ではないのです。既存のタワーはあまりにゴツすぎて、センサーに来る前に風を大きくゆがめてしまいます。設置すべき都市も、同じような建物が同じような間隔で並んでいることなど、いろいろと厳しい条件が課されます。それらをクリアしないと世界的に通用する環境データとして認められないのです。そのため、スイス(バーゼル)、カナダ(バンクーバ)などで、都市に専用の鉄塔を建てて、精密な計測を行おうじゃないか、という動きになっています。久が原タワーは、そのような環境研究の最前線に日本から名乗りを上げるものです。

 

飛び道具1 久が原30mタワー

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1年がかりで観測場所を探し回りました。当然のことですが、住宅街に30m鉄塔はいかがなものかいうことで、必ずしも近隣住民全員の賛成を得るに至らず、観測場所の決定は困難に困難を極めました(どの候補地でも90%以上の方々からは快諾をいただき胸を熱くしましたが、なにしろ環境研究ですし、反対者0を設置の前提としました)。そして、ついに、宗教法人カトリックお告げのフランシスコ修道会こども寮の配慮により、同敷地内に、タワーの設置許可を得たのでした。とにかく、寮長さんが大変理解のある方で、彼女に巡り会わなければ、間違いなくこのプロジェクトはとん挫していたでしょう。観測を開始して半年、すでに多くの新しい発見が出始めています。

 

飛び道具2 超音波風速計とCO2・H2Oアナライザー

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タワー頂上(30m)と20m地点に取り付けられています。現段階では、最高精度のフラックス観測装置です。雷とカラスだけが現在のところ心配の種です。

 


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